プログラム

プログラム紹介

発表プログラム詳細版(2019年7月10日に掲載しました)(7月28日に一部修正)

すべてのプログラムの発表者、発表題目、発表日時、教室番号、発表要旨を掲載しました。下記のリンクからPDF版をダウンロードすることができます。

発表プログラム詳細板のダウンロード

 

特別講演

【演題】
LD・Dyslexiaへの英語教育の課題

【講師】
竹田 契一(大阪医科大学LDセンター)

【講演概要】
 発達障害が背景にある読み書きが苦手な子どもの場合、単なるケアレスミス、うっかりミスで出来ないのではなく、大脳機能が関係する中枢神経系の障害が原因であることが多いのが特徴である。この場合、「ゆっくり、繰り返し教える」という学校、家庭で使われている一般的な方法ではその効果に限界がある。
 読み書き障害には、知的には問題がないにもかかわらず読み書きに特化したDyslexia(発達性読み書き障害ともよばれる)から話す、聞く力の障害を含めた広い意味のLD(Learning Disabilities)まで様々である。特に聴覚系の問題を持っており、音韻意識、認識力の低下に起因する読み書きの障害(Phonological Processing Disorders)、視機能の問題として、視力だけではなく、目の動き、両眼の調節機能がアンバランスであることから起こる読み書き障害(Visual or Visuospatial Processing Problems)まで様々である。
 平成30年から小学校5・6年生では英語が成績評価の対象になることから、LD・Dyslexiaの児童生徒への効果的な学習指導が緊急課題となっている。
 今回の講演では、LD・Dyslexiaの特性が英語教育に与える影響について述べる。

【講師プロフィール】
大阪教育大学名誉教授、大阪医科大学LDセンター顧問。現在、一般財団法人特別支援教育士資格認定協会理事長もつとめる。専門は発達障害児(LD・ADHD・高機能広汎性発達障害)への教育的支援、言葉の遅れに対するインリアルアプローチ、脳損傷児・者へのスピーチリハビリテーションなど。『図説LD児の言語・コミュニケーション障害の理解と指導』(文化科学社)、『高機能広汎性発達障害の教育的支援』(明治図書)、『特別支援教育の理論と実践Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』(金剛出版社)などの著書で知られる。

シンポジウム

【テーマ】  インフォメーション・トランスファーに基づく能動的な英語リーディング指導の可能性: 旧態依然なのは大学入試か高校か?

・コーディネーター兼シンポジスト: 卯城 祐司(筑波大学)
・シンポジスト: 前田 昌寛石川県立金沢商業高等学校
         渡辺 淳志河合塾

【概要】
インフォメーション・トランスファーとは、英文情報を、書く、話す、図や絵で表現するなど形を変えて表すことを指す。英語リーディングでは、頭の中に状況モデルを描くことができなければならない。しかし依然として、このような読み方が出来ない高校生、大学生が多い。それは、旧態依然とした受験英語指導が原因なのか、それとも教室でのリーディング指導にまだまだ改善の余地があるからなのだろうか。過去20年で大学入試英語は大きく進化した。ゆとり教育など、学習指導要領に書かれる時代の要請に合わせて入試は進化していたのだ。この事実は、記述中心の難関国公立大2次試験はもちろん、マーク方式の私大入試やセンター試験にも当てはまる。入試英語にきちんと対応できる英語力を身につけることは、状況モデルを描くことができるようになることと本来矛盾しないはずである。受験英語や受験指導のせいばかりにせず、そろそろ、本当にリーディングの授業を変えなければならない。本シンポジウムでは、インフォメーション・トランスファーに基づくリーディング指導こそ、大学入試に対応できる効果的な指導であり、英語が苦手な生徒を含め教室全員が生きる授業となることを、実際の大学入試問題や進学校・職業高校での実践例を取り上げながら、検討していきたい。

ワークショップ

blue_ball 1. 英語スピーキングの評価―理論と実践―

講 師: 小泉 利恵 (順天堂大学)
     矢野 賢 (茨城県立水戸第一高等学校)

【概要】
近年、生徒の英語コミュニケーション能力を測り、その力を高める授業を効果的に行うため、中・高等学校ではスピーキングテストを実施することが求められています。また、大学入試においてもスピーキングを含めた4技能テストの導入が議論されています。このような流れに備えるため、英語教員はスピーキングテストの方法について知っておく必要があります。本ワークショップでは、スピーキング評価を重荷と考えず、授業の一環の中で評価を行い、その結果を授業改善に活かしていくために頭に入れておきたい理論と実践の側面を紹介します。そのためにまず、スピーキングの評価での作成・実施・採点時の留意点を説明します。その後、教科書の内容と調べ学習に基づいて行ったプレゼンテーションと、教員との面接型の会話、生徒同士でのディスカッションを評価した実践を紹介します。次に、その際に使用した採点基準と実際の生徒のスピーキングの録画を見ながら、採点を皆で行います。採点時にずれる可能性のあるポイントについて触れ、テスト実施・採点時の注意点について確認します。スピーキングの評価がそれほど難しくなく、生徒の英語力の新たな側面に気づく楽しい機会であることを感じとれるようなワークショップを目指したいと思います。

blue_ball2. 特別支援教育の視点を取り入れた英語学習を考える

コーディネーター兼司会: 飯島 睦美(群馬大学)
       指導助言: 緒方 明子(明治学院大学)
       講  師: 中釜 智子(松江市教育委員会学校教育課)
             原  博子(雲南市立吉田小学校)
             村尾 亮子(雲南市立吉田小学校)

【概要】
 英語学習に難しさを感じる学習者たちは、決して少なくない、何らかの特性を持つ学習者たちが、英語学習のどのレベルで、どこにつまずきやすいのか、といったことについては、個々の英語担当教員によって、日々の指導経験の中で体感され、その指導方法は教員それぞれの努力によって工夫されているのが現状である。小学校での英語活動が本格化する中で、これをチャンスととらえ、その後の英語学習が少しでもスムーズに進んでいくような手立てが急務であろう。
 本ワークショップでは、先駆的な取り組みを実践されている3名の先生方にその指導方法をご紹介いただき、フロアのみなさんと共有できる機会としたい。さらに、こういった実践の内容について、明治学院大学の緒方明子先生より、特別支援教育の理論と観点から指導助言をいただき、教育現場で学習者に効果をもたらす指導は理論によって裏付けられることを示したうえで、現場教員の学習者を中心とした真摯な取り組みを強く推奨し、みなさんとともに、誰一人として置いてきぼりにしない英語教育の在り方と方法を議論したい。

課題研究フォーラム2年間継続研究の2年目

blue_ball1. 「生徒の言語使用につながる英語授業」を考える:実践と課題
   (関西英語教育学会)
・コーディネーター兼提案者: 中田 賀之(同志社大学)
・提 案 者: 興津 紀子(三田市立狭間中学校)
        長沼 君主(東海大学)
        木村 裕三(富山大学)
        稲岡 章代(賢明女子学院中学校・高等学校)
        池野 修(愛媛大学)

【概要】
次期学習指導要領改定案では, 中学校においても「英語の授業は英語で行うことを基本とすること」が示されている。「英語で授業」の本質は「教師が英語で授業を行うとともに、生徒も授業の中でできるだけ多く英語を使用させ、英語による言語活動を行うことを授業の中心とすること」である。本フォーラムにおいては、神戸大学附属中等教育学校にて実施された, 生徒の英語使用につながる英語授業の一具体事例を様々な角度から分析し、英語の授業のありようを考える。まず、学習者の教室内英語使用を促進するために実践者が取り組んだ英語での授業の詳細を報告する。次に、その授業実践において収集された生徒の言語使用に関する質問紙調査の結果を報告する。続いて、その授業実践における授業者の工夫の背景にある意図、授業者と学習者に見られた変化を探求する。最後に, 生徒の言語使用につながる英語での授業のありようを提案する。

blue_ball2. 英語教室をワークショップにー自立した英語学習者の育成を目指してー
   (四国英語教育学会)
・コーディネーター: 長崎 政浩(高知工科大学)
・提 案 者: 小坂 敦子(愛知大学)
        吉沢 郁生(甲南高等学校・中学校)        

【概要】
 教室をワークショップに変えることで、英語教育のいくつかの問題点を改善できるのではないか。そのような問題意識から、1年目の課題研究フォーラムでは、1980年代以降、米国で主に母語話者向けの教育で使われているライティング・ワークショップ、リーディング・ワークショップと呼ばれる枠組みを紹介した。
 2年目となる今回は、ワークショップの枠組みを取り入れた英語の授業実践について報告し、それをもとに、ワークショップの試みの可能性と課題を探りたい。今回の報告では、従来の授業とは際立った違いをもつ、以下の3点に焦点を絞る。
 ミニ・レッスン:クラス全員を対象とし、一人ひとりが主体的に書くこと・読むことを念頭に、書き手、読み手として役立つ知識やスキルを教える。
 カンファレンス:学習者との個別のやりとりをとおして、一人ひとりの特性に目を向け、読み書きの全プロセスを通して、必要な指導やサポートを行うことが目的であり、ワークショップの中核とも言える時間である。
 ブッククラブ:読んだ本について、面白いと思ったところや考えたこと、疑問に思ったことなどについて話し合う活動である。従来の読み方を変えるだけでなく、書くことへのつながりも含めて、4技能の統合も可能である。
 授業をワークショップに変えるという試みは、英語教室の何を、どう変える視点を提供しているのか。当日は、参加者の皆さんとともに考えていきたい。

課題研究フォーラム2年間継続研究の1年目

blue_ball1. ワーキングメモリ機能 にみる小・中学生の認知的特徴
  (東北英語教育学会)
・コーディネーター兼提案者: 佐久間康之(福島大学)
・提 案 者: 齊藤 智(京都大学)
        髙木 修一(福島大学)

【概要】
 現在実施されている小学校高学年の外国語活動が次期学習指導要領では教科化となり、中学年から外国語活動が実施される。さらに,中学校の英語では授業時数は現状維持のまま習得すべき語彙の数が増加する。そのため、言語学習の効率化が一層重要となる。
 本フォーラムでは、認知発達が顕著な段階にある小学生と中学生を対象とし、言語学習に直結する認知機能であるワーキングメモリ内の「実行機能(中央実行系)」と「音韻ループ」の特徴を明らかにする。具体的には,次の3点、1.二言語(日本語と英語)情報の注意能力及び自動化(ストループ・逆ストループテスト)、2.二言語の短期記憶容量(デジット・スパンテスト)、3.英語の音韻情報の認知と産出(英語の非単語反復テスト)に焦点を当てる。これらの認知機能の測定に使用した刺激は、数字(0~9)と5色(あか、あお、きいろ、みどり、くろ)の二言語情報,及び英語の音韻配列から構成される非単語である。小学生と中学生では英語のインプットに違い(活動vs. 教科)はあるものの、これらの言語情報は頻繁に接触するものであるため、なんらかの形で学習者の長期記憶に保持されていると思われる。そこで,学習者の認知発達段階の違いも踏まえつつ、小学生と中学生の短期記憶と長期記憶の間での検索に関する機能的特徴を探り,今後の英語指導の在り方を模索していく。

blue_ball2. 小中連携の英語とCLIL - Focus on Form・Literacy Skill を取り入れて-
   (中部地区英語教育学会)
・コーディネーター兼提案者: 柏木 賀津子(大阪教育大学)
・提 案 者: 山野 有紀(宇都宮大学)
        村上加代子(神戸山手短期大学)
        伊藤由紀子(大阪成蹊大学
        李  静香(大阪市立墨江丘中学校)

【概要】
本フォーラム提案グループでは、3年間、フィンランド・オーストリア・イタリアのCLIL教員養成を行う大学や小中学校と研究交流を行ってきた。先進例に学びながら、小学校外国語活動の教科化を視野に、(1)音声から慣れ親しんできた「ひとまとまりの表現」(Formulaic Sequences:FS)が言語習得に果たす役割を考察、(2)音声から学んだ児童に適した「音と綴りの関係」の指導、(3)単語の先頭音や音素が分かりつつある6年生の児童におけるCLIL実践「理科・環境」に取り組んできた。 一方、中学校英語科では、(1)小学校で慣れ親しんだFSを中学校でも受け継ぎ、(2)Focus on Formを活用したCLIL実践「ストーリー:サラダで元気」に取り組んだ。対象は中学校2年生である。明示的な文法指導を先に行うのではなく(rule to instance)、FSからの文のパターンへの気づきを引き出してから図式化した文法指導を行い(instance to rule)、以下の点について差を認めた。(ⅰ)文法への繊細さ、(ⅱ)学級集団における理解の上昇と差の縮小、(ⅲ)英作文の量と質である。フォーラムでは、海外と日本でのCLILの実践授業を紹介し、小学校と中学校の両方で、文法・内容・思考を切り離さない英語指導はどうあるべきかについて探究する。

授業研究フォーラム

blue_ball1. タスク性を取り入れたスピーキング活動の実践
  ―中学校・高校の接続の視点から―
  (北海道英語教育学会)
コーディネーター:山下 純一(函館工業高等専門学校)
・提 案 者: 小山友花里(留萌市立留萌中学校)
        中村 洋(ニセコ町立ニセコ中学校)
        臼田 悦之(函館工業高等専門学校)
        志村 昭暢(北海道教育大学)
        横山 吉樹(北海道教育大学)

【概要】
これまで北海道英語教育学会 Speaking SIG では、教科書に掲載されているスピーキング活動が、どのくらいタスク性が高いかということを分析し、学年間や教科書間などの違いを研究してきた。そして、それらの研究を通して、タスク性が高い活動は具体的にどのような特徴があるのか、また、どのような工夫を活動に加えればタスク性が高くなるのかということを明らかにしてきた。タスク性を高めた活動を実際の授業で用いた際、生徒の活動や生徒自身にどのような影響を与えるのであろうか。本発表では、中学校・高等学校(高専)でのタスク性が高い活動を用いた授業を紹介し、その特徴をアンケート調査や授業分析の手法を用いてその特徴を明らかにする。さらに、生徒の立場と授業者の立場の視点から見えてくるタスク活動を実施する際の利点や課題を明らかにしていく。

blue_ball2. コミュニケーション能力を育成するための小中連携を考える
  ―赤江小学校・赤江東中学校指導教諭の試み―
  (九州英語教育学会)
・コーディネーター: アダチ徹子(宮崎大学)
・提 案 者: 岩切 宏樹(宮崎市立赤江小学校)
        
遠目塚由美(宮崎市立赤江東中学校)

【概要】
小学校に英語活動(その後外国語活動)が導入されて以来、中学校との連携が必要だとされてきた。さまざまな学校の取り組みを見てみると、合同研修会や相互の授業参観など互いの実践を理解し合う試みから、5年間の年間計画表作成、指導する表現や語彙のリスト作りなどの指導内容の共通理解を図る試み、さらには小中の教員のTTや中学校教諭が小学校で指導するという指導者の協働など多岐に渡るようである。それぞれに意義があり、効果を生むものと思われるが、忙しい教員同士であり、多くの時間や労力を必要とするものは教員に負担がかかり、長続きしない恐れもある。理想は、それぞれが学習指導要領に則った授業実践を行い、結果的に学習者の学びがなめらかにつながっているという連携ではないだろうか。本フォーラムでは、宮崎県で優れた実践を行い他の教員のモデルとなる立場にあるスーパーティーチャー2人による連携を紹介する。それぞれが児童生徒の英語によるコミュニケーション能力を伸長させたいという同じ思いを持つと共に、発達段階に応じた指導や児童生徒同士の関わり合いに配慮したり、個々の学びの特性に応じた指導を実践したりすることにより、負担が少ないながらも効果的な連携による英語指導がなされている様子をお目にかけたい。

第5回大学生・大学院生フォーラム

(1日目) 大学生・大学院生のための交流の場
・司 会: 木村 雪乃(獨協大学)

(2日目) ミニシンポジウム 「学生の視点から学会を考える」
・司会兼パネリスト: 名畑目真吾(共栄大学)
・パネリスト: 和田 孝平(島根県立飯南高等学校)

【概要】
 今年で第5回目となる本フォーラムは、英語教育研究や勉学に勤しむ全国の大学生(学部生)・大学院生を対象としています。本フォーラムの目的は、研究大会において学生が気軽に交流できる場と、学生にとって有益な情報を提供することにあります。
 島根研究大会における本フォーラムは、大会2日間の昼休みを利用して行われます。大会1日目には参加者の皆さんで昼食をとりながら、お互いの研究内容や教員採用試験に向けた準備などについて情報交換を行います。大会2日目には「学生の視点から学会を考える」と題したミニシンポジウムを行い、学生として参加しやすい・意義のある学会にするにはどうすれば良いかを、参加者である学生のみなさんの意見を伺いながら考えていきます。
 本フォーラムは,学生だけのフランクな会です。大会に参加される学生の方は、ぜひ本フォーラムに気軽にお越し下さい。